第6回目のパラレルキャリアインタビューは、(株)フォアクロスの新井有美さんにインタビューさせていただきました。
翻訳、脚本、演出、プロデューサーとして数百タイトルの映画やドラマシリーズ、アニメの日本語版を手掛けてきた陰にはどんな想いや苦労があったのか、大変興味深いです。
Q1.お仕事内容について教えてください。

もともと映像制作会社に所属していました。
同僚(女性)と2人で起業した際には、その延長で映画やドラマの字幕・吹替版の制作を手がけるところから始めました。
営業はもちろん、翻訳者や声優のキャスティング、音響監督など1人で何役もやっています。
その後、徐々にスタッフを増やし、創業当時から続いているNHKレギュラー番組をはじめ、インディペンデント系劇場公開作、ドラマ、アニメ、NetflixやAmazonプライムなどネット配信の字幕や吹替制作を中心に、エンタメ以外にもテレビ通販番組の制作、企業のYoutube用動画制作、多言語(33言語)展開などフィールドを拡げています。
特に近年、通販番組のシニアモデルのマネージメントに力を入れています。
クライアントはテレビ局や映画会社のほか、外務省、厚生労働省、警察庁、東京都、大学、医療機器メーカー、ソフトウェア、外資化粧品メーカーなど多岐にわたります。
広報部:素晴らしいご経験ですね!私たちが目にしてるものを実は新井さんが手掛けていたってこともありそうですね!
Q2.業界的には女性起業家として先駆者的な存在ですが、なぜそんな大変な働き方をチャレンジされたのですか?

私が業界に入った20年ほど前は、もちろん働き方改革という概念はなく、皆さんもご存じのように映像制作会社の勤務態勢は過酷なものでした。
放送日に間に合わせなければいけないので、新人の頃は家に帰れないことも。
デスクの横に新聞紙を敷いて仮眠したこともありました。
でもそれだけの価値とやりがいを感じていたので、28歳で結婚したときも、仕事を辞めるという発想はありませんでした。
ただ当時の業界では結婚後も仕事を続ける女性は少なく、事務職以外で出産後に復帰する女性社員は皆無でした。
人間関係に恵まれたよい会社でしたが、業界全体の風潮の中で、この先の出産や子育てと並行してキャリアを積んでいけるのか悩む日々でした。
結果、会社員としてのキャリア継続に限界を感じ、先に独立した同僚とフリーランスとして共同で仕事をしようと決意して、当時の社長に退職を申し出ました。
叱られるかと思いきや、出資するので2人で会社組織として立ち上げてみたらどうかとありがたいお話をいただきました。
今思えば、こんなド素人の小娘たちに太っ腹な社長です(笑)。
何も分からないまま、書類を整えたり物件を借りるにも右往左往しましたが、いろんな方に助けて頂いて何とか会社の形を整え、2004年に「フォアクロス」を創業しました。
責任は重くなりましたが、自分の裁量やペースで働けるという、会社員時代には味わえなかった充実感で、最初の1~2年は無我夢中で奔走していました。
広報部:ストイックさとチャレンジ精神が素晴らしいですね!
Q3.経営者として17年、ママとして9年、上手くいく秘訣はなんだと思いますか?

自分では上手くいっているとは思っておらず、未だ発展途上なのですが、パパもママも仕事をしているのが当たり前だと思ってほしいです。
私の場合、学生時代から目指していた映画や映像という好きな仕事につけているので、仕事の楽しい面はもちろんですが、責任の重さ、苦しさも含めて仕事をしているリアルな姿を子どもに見せたいと思っています。
「今こんな番組を作ってるんだよ」とか「今日はこんな失敗しちゃったんだー」とか。
2人の子どもは小学生ですが、私が制作した番組がテレビで流れたりすると、その話を聞きたがります。
守秘義務があるので言える範囲だけですけど、よく話しています。
大人になってから、仕事をする期間はとても長いですよね。
どんな仕事についても喜びややりがいと感じてほしいです。
お金のためにいやいや働くのではなく、仕事って大変だけど楽しいものなんだよ、人生を豊かにするんだよと自分の姿を通して子どもに伝えられたらいいなと思います。
それが仕事へのモチベーションの一部にもなっている気がします。
広報部:お母様がキラキラと働く様子を、お子様はしっかり見ているように思います。
Q4.仕事とプライベートの両立で大変な事はありますか?

子供が小さいときは待機児童問題が深刻で、0歳児クラスだと入りやすかったので、1人目は4ヶ月、2人目は6ヶ月で保育園に入れて仕事に復帰しました。
時間管理は、他のワーキングママと同じように苦労しました。
携帯やメールを活用し、遠隔でスタッフに指示を出したり、子供を寝かせた後にパソコンに向かうなど、1日24時間の中で帳尻を合わせていた感じです。
1人目のときは、私も初めての育児で不安だったので、周りの専業主婦のママ友さんたちが寄り添って丁寧に子育てしているように見えて、コンプレックスや焦燥感で悩んだこともありました。
母が専業主婦だったので、理想の母像があって自ら呪縛をかけているのかもしれません。
でも、3歳違いの下の子を産んだとき、3年間で世の中の意識がだいぶ変わったのを感じました。
1人目のときは出産退職していた人が多かったのですが、2人目のときは保育園が急増したこともあり、周りのママ友もほとんど育休を取得して復帰していたんです。
精神的にすごく楽になりました。
会社では「母であることを言い訳にしない仕事人」、家庭では「働いているのが当たり前の母」でありたいと思っています。
あ、でもそれだと仕事寄りですね(笑)。
まだまだベストバランスを模索中です。
広報部:バランスはその時々によっても変わっていきそうですね。仕事寄りでも、それがベストなバランスということもありそうです。
Q5.今思う、あなたの夢を是非お聞かせ下さいませ。

女性やシニアが活躍するようなことをいろいろやっていきたいです。
通販のシニアモデルのマネージメント事業は5年前に開始したのですが、もっともっと拡大していきたいと思っています。
私自身は運や周りにも恵まれて、キャリアを分断せずに来られたのですが、まだまだ結婚や出産育児でキャリアを断たれる女性は多いですよね。
少し上の世代だと特に、多くの優秀な女性がブランクによって、思うようにキャリアを継続できなかったと思います。
お子さんが独立して、これから自分のやりたいことにチャレンジしてみたい!という意欲を持っている方を応援したくて、モデル事業を立ち上げたんです。
プライベートと両立しながら自分のスタイルで働き続ける女性が増えたら素敵ですよね。
人生の先輩としても理想の姿です。通販の商品は女性がターゲットですから、主婦の経験や生活者の目線が生かせる仕事なんです。
私の会社には60,70代でデビューして、売れっ子になったモデルも多数います。
人生100年時代、何歳になっても新しいことを始められる。
私自身もそうありたいですし、そのメッセージをもっと広く伝えていくのが夢であり目標です。
広報部:「人生100年時代、何歳になっても新しいことを始められる」と言い切れる新井さんがかっこいいです!
Q6.これからパラレルキャリアとして働く方へアドバイスをお願い致します。

私がマネージメントしているモデルは、パラレルキャリアの方がほとんどです。
芸能の仕事だけでなく、保険会社、メイクアップアーティスト、お料理教室の主宰、セラピスト、占い師、インストラクターなど多岐にわたっています。
撮影やインタビュー、座談会などのモデルの仕事経験を、クライアントとの話題にしたり、テレビ出演をプロモーションにしたりと、本業とのシナジーをはかっている方も多いですね。
主婦の経験や専門職のスキルが商品のPRに生かせる通販モデルの仕事は、非常にパラレルワーク向きだと思います。
そういった、自分の専門分野と相乗効果がはかれるような仕事を探すことをオススメします。
キャリアアップには、スキルや経験を生かしながら、新たなジャンルの仕事に挑戦していくことが大切だと思います。
AI化が進み、リモートワークなど働き方改革もはじまる中で、指示待ちの仕事しかできない人はすぐ行き詰まるでしょう。
「想像力」と「創造力」を鍛え、常に多視点で物事を見られるようにするためにも、いろんなフィールドでの経験値が必要だと思います。
広報部:いわゆる指示待ちの人も多くいらっしゃいますが、パラレルキャリアを通して、自発的に行動する術を見つけられるといいですね。
【編集後記】パラレルキャリアの実例をご紹介!~パラレルキャリアインタビュー第6回~
ストイックに仕事に打ち込んできた新井氏。
その陰には苦悩もあったかと思いますが、常に挑戦してきたその姿は、尊敬に値する部分だと感じました。
新井さんのように、キラキラとパラレルキャリアで活躍するにはどうしたら良いの?と悩まれてる方は、本を参考にしてみると良いかも知れません。
>>パラレルキャリアにおすすめの本5選~今読むことで人生が変わる~
働くママはとてもハードです。
家事負担を少しでも減らしたいという人は、下記の記事も参考になさって下さい。
>>働くママが夕飯のレシピに困った時に参考にしたいおすすめサイト5選
パラレルキャリアインタビュー、第6回目も素晴らしいお話、本当にありがとうございました!
☞パラレルキャリアインタビュー第6回 ゲストプロフィール

株式会社フォアクロス
新井有美氏
1974年、横浜生まれ。玉川大学文学部芸術学科卒業後、映像制作プロダクションにて字幕・吹替制作に従事する。女性が長く活躍できる会社を目指して2004年に同僚と(株)フォアクロスを創業。翻訳、脚本、演出、プロデューサーとして数百タイトルの映画やドラマシリーズ、アニメの日本語版を手掛ける。 映像翻訳者養成講座や映像翻訳スクールでの講師経験も豊富。近年は通販のシニアモデルの発掘、育成に力を入れている。プライベートでは2児の母。
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